卒業研究紹介


■システム設計教育手法に関する研究

PCの低価格化やインターネットの普及などに伴い,コンピュータが身近なものになってきている.また,様々な電化製品にコンピュータが組み込まれるようになったため,知らない間にコンピュータを利用して生活するようになっている.これだけ身近にコンピュータが普及してきたということは,そのシステムを構築する技術者が大量に必要となってくる.システムを構築するためにはハードウェアとソフトウェアの両面に対する深い知識が必要となるが,コンピュータのハードウェアの動作はOSに隠されており,一般の利用者には実感しにくいブラックボックスになってしまっているので,ハードウェア教育がとても重要となっている. 澤田研究室では,研究室のテーマとしてハードウェアシステム設計教育の改善を掲げており,よりよい教育のための教材開発やカリキュラム開発を行っている.

■FPGAを搭載したロボット教材並びにカリキュラムの開発

組込みシステム技術者育成のための教育にロボット教材を用いる例が多数報告されている.これは動機づけやシステムの動作をロボットという分かりやすい形で確認するといった面では優れているが,現在市販されているロボット教材ではソフトウェアの開発の経験しかできないため,ハードウェアソフトウェア協調設計やプロセッサを自分で選定してシステムを構築するという経験ができないという欠点がある. 澤田研究室ではこれに対し,メインの基板にFPGAを搭載したロボット教材の開発とそれを活用したカリキュラムの開発を行っている.FPGAは再構成可能なデバイスであり,利用者が自由にハードウェアの設計を行うことができるため,ハードウェアとソフトウェアを同時に設計したり,ハードウェアのみで制御させたりできるようになる.

■PICタイマーを用いた組込みソフトウェア教育カリキュラムの開発

組込みソフトウェア設計がPC上で動作するアプリケーションソフトウェア設計より困難な要因としては、設計者が周辺回路まで把握しなければならないことや、リアルタイム制御を考えながらプログラムをしなければならない点などが挙げられる現在の組込みソフトウェア開発の現場では、高級言語を用いてリアルタイムOS上でシステム開発を行うことが主流となっている。これは、生産性を高めるために、より抽象化した設計を行うためであるが、初学者にとってはプロセッサの動きがOSにより隠され、ブラックボックスとなっているため、周辺回路の動作や信号のタイミングなどが理解し難くなり、高品質なシステムを開発できる技術者の育成を困難にしている一因となっている。これらの問題点を解決するためには、マイコンによって機器を制御するソフトウェア開発を行わせ、その仕組みを理解させることが有効であると考えられる。また、その際に機械語に近いアセンブラを用いて、OSが担当するべき部分まで自分で設計することによって、よりプロセッサの動きを実感でき、高品質なシステム開発を行うことのできる技術者の育成にもつながるのではないかと考えられる。本研究では、PICマイコンを用いた多機能タイマーを教材とし、アセンブラ言語を使用して組込みソフトウェア教育を行うためのカリキュラムの開発を行っている。

■FPGAとプロセッサを組み合わせたシステム設計教育に関する研究

急速な技術革新が進む現代、日常生活の身の回りで多くの組込みソフトウェアが動いている。組込みシステムは技術が進歩し日々市場が拡大する分野であるにも関わらず、人材育成が困難であり人材不足が深刻化している。組込みシステム技術者が不足している中、技術の急速な進歩により製品のブラックボックス化が進み、システムの全体を見渡してハードウェアとソフトウェアの両方の知識をもって設計できる人材の育成が課題になっている。この問題を解決するには、自分が作る製品の仕様を正確に理解し、機能を実現する上での問題を適切に切り分け、より高品質なシステムを構築することができる人材の育成が必要不可欠である。また、育成の対象となる学習者は、それぞれ違った状況・技術力であることが考えられるため、全くのゼロから学ぶ初学者向けや他分野が専門の技術者向けなど、学習者の段階や状況に応じた課題を設定することも必要である。本研究ではFPGAとプロセッサを組み合わせてシステム全体として設計できる技術者育成のためのカリキュラムの開発を行う。特に、学習者に要求仕様を正しく理解させやすい課題の設定に重点を置き、技術者としての基盤となるスキルを構築できるカリキュラムと課題を検討する。
update : 2007.06.27