交通事故による死者の数は、世界で年間50万人以上と言われてます。交通事故は、現在社会で解決すべき重要な問題の一つです。近年ITS(高度交通システム)をはじめとする自動運転システムなど運転者支援システムの開発が進められてきています。しかし、いくら運転者支援システムの整備が進んでも、人が安全運転について理解し、それを受け入れ、実行しなければ、自動車運転事故を防止することはできません。また、運転者が安全運転法を理解していてはじめて、ITSにおける危険警告や運転支援を安全運転に役立てることが可能となります。つまり、事故防止のためには、安全運転に関して運転者の指導と管理が必須です。我々は、このような視点で自動車運転事故防止の教育・管理に関わるITSについて研究を行っています。 過去に大きな問題であった工場での事故は、不安全行動が発生した時点(実時間)における即時の指摘や、その防止のための指導を通して、不安全行動を事前に防止することにより事故を効果的に減少させてきました。自動車の運転事故も、同様に、不安全行動の実時間での防止の指導と管理により効果的に減少させることができるはずです。ところが、工場では従業員の行動を直接観察できるのに比べて、自動車では同乗しない限り運転者の運転挙動を把握することは困難です。 しかし、近年の情報通信技術の発達にともない、自動車に搭載した装置によって運転者の運転挙動を取得し外部に実時間で伝送することが可能になってきました。危険な運転をした場合は、その時点で随時フィードバックし、指導した方がその効果も高いので、運転者の運転挙動を実時間で把握し助言することにより、交通事故を大幅に減少できると予測されます。そこで、我々の研究室では、我々の安全運転(KM)モデルに基づく安全運転管理教育システム(Assistant System for Safe Driving by Informative Supervision and Training: ASSIST)の開発を行っています。 自動車の運転事故で多いのは追突と出会い頭の衝突です。これらの事故防止について、本システムにおける1人の管理者による1人の運転者の管理・指導実験では、運転の仕方の効果的な改善を確認しました。現在は、複数車両の管理・教育の研究を行っています。将来的には、運行管理と統合し、運行と安全を同時に管理するシステムにすることが望ましいと考えています。 事故を効果的に防止するには、自動車運転上の不安全挙動が発生した時点で、即時にそれを防止するための管理や指導を行うことが重要です。一方、その管理や指導を有効にするには、安全運転をする上で必要な知識を教授することも重要です。 したがって、安全運転の理論的な指導をシミュレータ利用や講話形式で行い、ASSISTで実践的な指導をするのが理想的と考えられます。つまり、ASSISTで強制的に安全運転を守らせるということではなく、運転者に安全運転の利点をしっかり理解させ、自発的に安全運転を行ってもらい。それをASSISTで支援するという形での管理・教育です。 |